
2025.10.21火
作家主義のO.D.
第一回:ジャック・リヴェット
出演
大寺眞輔
日時
10/21(火)19:30スタート
料金
予約 2,000円 当日 2,500円
映画についてのトークイベントです。
毎回、一人の映画作家とその作品について、映画批評家で新文芸坐シネマテーク主宰者の大寺眞輔がくわしく楽しく和やかにお話しします。
適宜、映像や資料も参考にお見せする予定。
時間があれば、お客さんからの質問もお受けしたいと考えています。
第一回は、ジャック・リヴェットがテーマ。
「作家主義のO.D.」というトークシリーズを始めることにしました。
「さっかしゅぎのおーでぃー」と読みます。
批評家であり旧友でもある佐々木敦さんに声をかけてもらったのが開催のきっかけとなりました。
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「作家主義」は、ヌーヴェル・ヴァーグを生み出した主に50-60年代フランスで提唱された、映画についての一つのアプローチです。映画をその作者とされる監督を基準にして見ようという主張であり理論であり批評の書き方でもあります。
「カイエ・デュ・シネマ」誌に集ったアンドレ・バザンやフランソワ・トリュフォー、ジャン=リュック・ゴダール、ジャック・リヴェットらがこうした傾向を生み出し強めたとされています。
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一方、「O.D.」は、主に3つの意味を重ねています。
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一つ目は、「王道」。作家主義の王道ということ。
王道とはクラシックであり、権威を意味する場合もあります。50年代頃から70年以上も唱えられてきた作家主義は既に一つの確立したクラシックな映画への接し方です。そこには、もはや目新しさはあまりないかも知れません。また、権威的に機能する場合もあるでしょう。そして、文化に携わる人間、様々な文化・芸術作品に日頃から接している人たちほど、権威を嫌う傾向が強いものです。私にもそうした側面がかなりあります。
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でも、クラシックや権威を経ずに、人はいったいどうやって一つの作品を評価できるでしょう。人それぞれ、趣味や価値観は違うと言われるかも知れません。でも、歴史や古典を知らない人ほど、昔から繰り返されてきた通俗的趣味や凡庸な考え方、権威的な見方に依存しがちな事も事実です。権威を否定する人たちこそ、逆に権威的に振る舞ってしまうことも多い。例えば、ネットには古典的評価を否定し、自分独自の考えを強く主張しながらも、実際は「数多く映画を見てきた自分の目」を権威として振りかざす人があまりにも多いように私には見えます。
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権威や歴史的価値観を否定したり、そこから離脱できたりするのは、権威や歴史を一度は通過した人だけだと私は思うのです。その意味でも、王道を一度きちんと知っておくことはとても大事。そして、それを固着した権威としてではなく、そこから自分自身の力で歩みを進めていくための出発点や迂回路として利用すること。それに、実際の話、映画なんてマイナーな趣味の中では、王道を気負いなくやってるくらいが割とちょうど良い按配だって気がしなくもないです。
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二つ目として、「O.D.」は「overdose」を意味します。過剰摂取です。
私は普段、新文芸坐シネマテークというシネクラブで、映画上映の後に解説トークを一時間ほど行っています。そこでしばしば他人から言われるのが、早口で情報量が多いという指摘です。事実だと思います。そしてこうしたスタイルで喋るようになった理由には、シネフィルからオタク世代としての自分が属するある種の美学というかモノの考え方みたいなものがあるでしょう。詳しくは述べませんが、一つには、あまり自分をカリスマ化したくないという気持ちが背後にある。何か大事なそうなことだけをゆったりした語り口や物々しい雰囲気で語る人に対して、ある種の忌避感があります。また、この情報が溢れる時代の中、人は情報をそぎ落とすのではなく、むしろ過剰摂取することではじめてそこに依存しない思考へと至ることができるのではないか、ピュア(?)になれるのではないかという考え方にも通じています。
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三つめの「O.D.」は「OhDera」です。すいません、これは半分冗談です。
でもまあ、私なりの映画の見方・愛し方で映画を語るトークイベントなんだと思っていただければ。
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ともあれ、王道であり、過剰摂取であり、私なりの映画の見方、愛し方でもある作家主義的アプローチを一つの出発点とした、楽しいトークイベントにしたいと考えています。
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第一回は、ヌーヴェル・ヴァーグを代表する映画作家の一人であり、すぐれた映画批評家でもあったジャック・リヴェットを取り上げます。『美しき諍い女』などで知られる映画監督です。
評判が良くて、ある程度お客さんに来てもらえるようなら、この先も何度か続けられると思います。
どうか一つ、よろしくお願いします。
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大寺眞輔
予約方法:_
info@scool.jp にてメール予約受付。
※件名「作家主義のO.D.」本文に「名前」「電話番号」「枚数」をご記入ください。こちらからの返信をもってご予約完了となります(24時間以内に返信します)。定員になり次第受付を締め切らせていただきます。
※予約キャンセルの場合は、お手数おかけしますが、 必ず事前にご一報ください。
お問合せ:SCOOL
メール info@scool.jp
ジャック・リヴェット(Jacques Rivette)
1928年、フランスのルーアン生まれ。大学に通う傍らシネマテーク・フランセーズに足繁く通い、トリュフォーやゴダールらと友人になった。映画雑誌「カイエ・デュ・シネマ」に参加、後に第3代編集長となる。1961年には長編処女作『パリはわれらのもの』が公開。第3作『狂気の愛』から大きく作風を変え、さらに次作『アウト・ワン』は12時間を超える大作となった。エキセントリックな側面のある作風と興業的不安定さから自他ともに認める「呪われた映画作家」だった。84年『地に堕ちた愛』以降は経済的に安定、91年の『美しき諄い女』がカンヌ国際映画祭で審査員グランプリを受賞するなど傑作を連発。国際的巨匠として名声を確立した。代表作は他に、『セリーヌとジュリーは舟でゆく』『彼女たちの舞台』『パリでかくれんぼ』「恋ごころ』など。2016年1月29日、惜しまれつつ逝去。

大寺眞輔
映画批評家、早稲田大学・日大芸術学部講師、新文芸坐シネマテーク主催、IndieTokyo主催、オンライン映画塾主催、横浜日仏学院シネクラブ主催、字幕翻訳。1991年「カイエ・デュ・シネマ・ジャポン」でデビュー後、さまざまな雑誌・新聞・書籍などに映画評や書評などを執筆。DVDやBlu-rayのリーフレットや映画パンフレットにも寄稿多数。テオ・アンゲロプロスDVDシリーズでは、全作品に解説を書いた。テレビ出演や講演、映画祭審査員なども多数務める。千葉テレビの情報番組では、一年間レギュラー出演した。主著は「現代映画講義」(青土社)「黒沢清の映画術」(新潮社)。ジョアン・ペドロ・ロドリゲスのレトロスペクティヴを個人で独自開催したほか、ダミアン・マニヴェル作品、ジャック・リヴェット『アウト・ワン』などを自主配給ないし上映した。韓国シネマテーク主催の講演会やポルトガル・シネマテーク依頼による作家論考の執筆など、海外での仕事も多い。