『クバへ/クバから』刊行記念/上演化プロジェクト

2022.4.22 - 4.24

『クバへ/クバから』刊行記念/上演化プロジェクト

写真家/舞台作家の三野新が、いぬのせなか座と協働し2021年6月に刊行した、自身初となる写真集『クバへ/クバから』。その刊行を記念して、上演化プロジェクト(パフォーマンス/展示)と連続トークイベントを行う。
_上演化プロジェクトで演出を担当するのは、パフォーマンスやインスタレーションを絵画的かつ演劇的な手法でジャンル横断的に制作する、楊いくみ。『クバへ/クバから』において展開された「東京と沖縄のあいだの歴史的かつ地政学的な距離の遠さと人同士の距離の遠さの重ね合わせ」をめぐる思考と制作の痕跡が、さらに新たにそれと別の距離を持つだろう楊に手渡されていく。
_一方、連続トークイベントでは、『クバへ/クバから』にまつわる広範かつ深化を伴うセッションが多数のゲストを迎えつつ毎夜開催されていく。それぞれを貫くテーマとなるのは、読者や鑑賞者への『クバへ/クバから』の【「引き渡し」の儀式】である。作品に内在したものが現実に「上演化」されるための方向性は、各個人の未来へと同時に引き継がれていくことを意図している。
_初日のトークゲストである平倉圭(芸術理論)とは、言葉だけではなく写真イメージやドローイングなどの「かたち」を介した「戯曲」である本作の特徴を反映した視覚言語的トークセッションを行う。登壇者である3人が実際のヴィジュアルを別々のやり方で具体的に検討しながら、「かたち」によって思考されるプロセスと新しい表現のあり方について議論を進めていく。
_二日目は、『クバへ/クバから』制作プロジェクトに「伴走者」として関わり、同書の栞=小冊子に文章も寄せた佐々木敦(思考家)とともに、「『クバへ/クバから』とはなんだった/なんなのか」について、初めて触れる読者や関心者向けの解題的なトークを行う。すでに『クバへ/クバから』を読み終えた人にとっても、以前から知っているがいまいち取っ掛かりが得られていないという人にとっても、より深くまで入っていくための手がかりとなるトークセッションである。
_最終日の三日目は、同じく本作の「伴走者」である小田原のどか(彫刻家・彫刻研究・版元運営)を迎え、上演化プロジェクトで演出を担当する楊いくみと出演者を交えたトークセッションを行う。「戯曲」として書かれたもの/構成されたものが現実に上演された作品となるためのプロセスをめぐる原理的な話を中心に、今回の上演における楊と出演者たちの試行錯誤を共有しながら今後の更なる創造/想像へと思考の射程を広げていく。
_以上のようなトークならびに上演化プロジェクトを、同じ場で、刊行から10ヶ月弱を経たいまだからこそ可能なやり方でもって実施する。今回のイベントを通じて、『クバへ/クバから』が帯びていた可能性をより広く、より高密度に読者/鑑賞者へと開いていきたい。作品に内在するものが現実に「上演化」されるための手段や方向性の模索は、作品を使用する各個人の未来へと同時に引き継がれていくはずだ。

『クバへ/クバから』上演化プロジェクト
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【日時】
上演:
4月22日(金) 18時〜
4月23日(土) 17時〜
4月24日(日) 15時〜
*上演時間予定 30分
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展示:
4月22日(金)15時〜18時
4月23日(土)12時〜17時 / 20時〜21時
4月24日(日)12時〜15時
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【三野新 コメント】
_『クバへ/クバから』は、場所と場所、人と人との物理的な距離にまつわる関係性を描いた作品です。物理的な距離は、昨今さまざまな方法で短くされ、速くされ、単純なものとして扱われるようになっています。本作と読者を結ぶ関係性は一方、全く単純なものではないはずです。演出を行う楊さんは、本作の一読者としての経験から始まり、実際の上演を制作する表現者としての関係を本作とつくりあげました。ただし、それは本作と読者や鑑賞者を結ぶ糸の数だけ無数にある表現の営みを妨げるものではありません。上演化プロジェクトは、遠い場所から表現へと向かうことができた人間たちの紛れもない勇気に関する具体的な実証です。
_あっちとこっちの距離はいまだに遠く離れているように見えるけれど、その遠さをただ遠いままにしておかない個人の意志の力を、僕は引き続き信じています。
_上演化のための制作を快諾していただいた楊さんと、出演者の三人、そしていぬのせなか座をはじめ本イベントに関わっていただいた方々に感謝を申し上げつつ、これから起こるであろう実証の数々を引き続き皆さんにお見せできることを楽しみにしています。
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【楊いくみ コメント】
_昨年末に三野さんより「『クバへ/クバから』を上演してほしい」とお声掛けいただきました。とても光栄で喜びながら、さっそく「上演」という言葉と共に改めてこの戯曲写真集をめくった時、その紙面の上ではすでに一つの上演が行われているようでした。左と右のイメージの連続に意識の加速度がもっていかれ、少しの浮遊をしながらで最後まで読みきり、本を閉じると日常との再統合が始まりました。その時はそれがこの本による最適な上演にも思えました。
_その上で、この作品を上演化するとは何か、写真とは、距離・移動とは何か。現在私やパフォーマーは未だ一読者のまま、例えば「そこちょっと遠いな、手ぇもっとこっちじゃない?」という問答を繰り返しています。本作にとっては明らかに解の無い会話ですがそれでもこの混乱と誤読と付き合い続けたいと思っています。その結果が本作の役者(=写真)に身体共同とパースペクティブを与えると、それが上演につながると目論みたいのです。
_そんな今私は沖縄へいくためのパッキングをしています。結局クバやその色を飛ばすほどの太陽は東京にはありませんでした。
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【クレジット】
作:三野新
演出:楊いくみ
出演:石川朝日、赤松あゆ、MARU OHRE
編集・デザイン:山本浩貴(いぬのせなか座)
制作協力:武田侑子

トークイベント(あるいは引き渡しの儀式)
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①『クバへ/クバから』のかたちをめぐるドローイング検討セッション
日時:4月22日(金) 19時〜21時
登壇者:平倉圭、三野新、山本浩貴
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②『クバへ/クバから』とはなんだった/なんなのか?
日時:4月23日(土) 18時〜20時
登壇者:佐々木敦、三野新、山本浩貴
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③『クバへ/クバから』を上演するとは〜パフォーマンスをめぐるトークセッション
日時:4月24日(日) 16時〜18時
登壇者:小田原のどか、楊いくみ、出演者

チケット
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【入場料】
パフォーマンス+トーク+展示:各日 3,000円
展示のみ:各日 500円
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【オンライン配信(パフォーマンス+トーク)】
トーク各回につき 1,500円
*パフォーマンス|録画映像を後日配信(全て共通)
*トーク|各回の生配信、アーカイブ配信
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【チケット発売日】
入場チケット:3月23日(水)
オンライン配信チケット:3月29日(火)
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チケットのご購入はこちら
https://tofromkuba-booklaunch-onsite.peatix.com/

<パフォーマンス/トークについての注意事項>
-記録・配信用の撮影が入ります。その際、ご来場のお客様が写真・映像等に映り込む可能性がございます。予めご了承ください。
-上演の録画映像配信は、ご購入いただいた方へ視聴リンクを後日お送りいたします。
-トークの配信は、生配信のリンクとアーカイブ視聴のリンクをそれぞれお送りいたします。
-トーク①「『クバへ/クバから』のかたちをめぐるドローイング検討セッション」について
_・会場ではドローイングを描きながら参加することが可能です。
_・ドローイングを描きながらの参加を希望される方は、当日に本写真集をお持ちください。会場でもお買い求めいただけます。
_・筆記用具類の準備はございませんので、ご持参をお願いいたします。紙は会場にてご用意いたします。
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<展示についての注意事項>
-展示のみのチケットをご購入されたお客様は、パフォーマンスやトーク中は会場にご入場いただくことができません。予めご了承ください。
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<新型コロナウイルス感染症への対策>
-本イベントは、新型コロナウイルス感染予防対策を講じて開催します。
-ご入場の際には必ずマスクをご着用ください。マスクは不織布マスクを推奨しております。
-入場時の検温・手指消毒等にご協力ください。
-37.5°C以上の発熱がある方は、入場をご遠慮いただきます。
-会場内での混雑を避けるため、入退場時に制限を行う場合があります。
-新型コロナウイルス感染拡大の状況によっては、スケジュールを変更、中止とする場合があります。予めご了承ください。
-感染症対策のため、お客様の購入時のご連絡先を保健所などの公的機関に提供する場合があります。

主催:三野新・いぬのせなか座写真/演劇プロジェクト制作実行委員会
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お問い合わせ:
tofromkuba@gmail.com

三野新

1987年福岡県生まれ。写真家・舞台作家。ニカサン主宰。
舞台芸術作品を制作する「写真家」として、「現代の恐怖の予感を視覚化する」ことをテーマに活動。写真展示・パフォーマンス作品の発表や、他アーティスト・雑誌・ファッションブランドとのコラボレーション多数。
受賞歴にフェスティバル/トーキョー12′公募プログラム選出、第2回&amp;第4回写真「1_WALL」展入賞、TOKYO FRONTLINE PHOTO AWARD ♯04 準グランプリ&審査員賞受賞、第19回AAF戯曲賞特別賞受賞など。本書が第一写真集。

楊いくみ

1993年東京生まれ。パフォーマンスアート作家・美術家。
都市生活史を起点にパフォーマンス/インスタレーションを制作。主に山水画の遠近法を用いて空間と共同体を作る。パフォーマンスディレクション、舞台出演も行っている。
主な展覧会に「When I quit eating tomato」(TOKAS OPEN SITE6 / 2021)、個展「Notes on 24 minutes」(Proto theater /2021)、グループ展「鮭」(アキバタマビ/2020)など。

石川朝日

俳優。ジャックルコック国際演劇学校卒業。
2019年帰国以降、『仮面』が活動・興味の中心にあり、からだや演技を考える。
最近は 作ること/参加すること について考えている。趣味 徘徊

赤松あゆ

東京藝術大学大学院 油画専攻在籍。
「物語を受容すること」を起点にインスタレーション、パフォーマンス、立体・絵画など複合的な作品を制作する。

MARU OHREI

音楽家。ジャンルを問わず様々な形で音を使った表現活動を行う。
プレイヤーとしてだけでなく、PAや照明といった裏方まで多岐にわたり活動する。

平倉圭

横浜国立大学大学院Y-GSC准教授。
芸術制作過程における物体化された思考を研究している。最近は動物論と絵画論。著書に『かたちは思考する―芸術制作の分析』(東京大学出版会、2019年)、『ゴダール的方法』(インスクリプト、第二回表象文化論学会賞受賞)ほか。作品に《テキスト、山、準-部分》(「Variations on a Silence」展)ほか。

佐々木敦

思考家。HEADZ主宰。文学ムック「ことばと」編集長。映画美学校言語表現コース「ことばの学校」主任講師。
芸術文化の複数の領域で、さまざまな活動を行っている。『これは小説ではない』『それを小説と呼ぶ』『私は小説である』『新しい小説のために』『小さな演劇の大きさについて』『批評王』『この映画を視ているのは誰か?』『ゴダール原論』など著書多数。

小田原のどか

彫刻家、評論家、出版社代表。芸術学博士(筑波大学)。
戦争と彫刻の関わりについての作品制作と学術研究、評論執筆を並行して行う。 単著に『近代を彫刻/超克する』(講談社、2021)。主な展覧会に「近代を彫刻/超克するー雪国青森編」(個展、国際芸術センター青森、2021年)、「あいちトリエンナーレ2019」など。『芸術新潮』『東京新聞』に評論を連載。